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昔々のその昔 童(わらべ)の姿でやってきた
童男さんは今日もここにいる 粉河のまちの駅前に
とんまかとんとんまかとん だんじりの 太鼓の音が響きだす
※1ど ど 童男さん とん とん とんまか
こ こ 粉河にやってきた
※2ど ど 童男さん とん とん とんまか
ぼ ぼ 僕らの童男さん
2
縁起絵巻を読みながら とんまか通りを通り抜け
童男さんはここでも笑ってる 大門橋のほんはたで
カラカラコン カラカラコン 鉦(かね)が鳴る 粉河のまちのお祭りだ
※1 繰り返し
※3ど ど 童男さん とん とん とんまか
こ こ 粉河の童男さん
※4トンマカトンマカマトマカトンマカ トンマカトンマカマトマカトンマカ マトマカトカマカマ トマカトンマカ マトマカトンマカマトマカマ
3
とんまかとん とんまかとん 振り向けば
竜門山に 陽が映えて
※1・※2 繰り返し ※1・※3 繰り返し
童男さんは 本当はここにいる 粉河寺の童男堂(どうなんどう)
1年1度会える日は 12月の童男会(どうなんえ)
※4 繰り返し
(童男さんの歌 語り)
昔々、孔子古(くしこ)という猟師のところに、童(わらべ)の行者がやってきて、お堂に入って7日で観音様をつくって、いてへんようになったんやと。ほんまは、あの人は観音様やったんや。ほいで、みんな童の行者を「童男さん」と呼んで、そらありがたがったらしいで。
童男さんは、河内の長者どんの娘の病を直して、紀州の粉河にいるってゆうて、いんでもうたんやと。長者どんが娘を連れて粉河にきたところ、お堂の中に童男さんにやった小刀と赤い布をもった観音様がいてたんやと。
やっぱり童男さんは観音様やったんやいうて、ほんで、みんな、大喜びしたんや。 |
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(解説)
粉河の童男さんをご存じですか?
紀の川市が誇る、歴史深い粉河寺の草創に深く関わった童(わらべ)の姿をした行者です。紀の川市では昔から「童男さん」と親しみをこめて呼ばれています。
平成20年、粉河の商店街では、童男さんによって商店街の活性化を図ることになりました。
童男さんの石像を粉河駅前と粉河寺の大門橋の端に二基設置するとともに、粉河駅から粉河寺まで約1qの「粉河とんまか通り」に30基のモニュメントを設置して、粉河寺縁起絵巻などの童男さんの物語などを読みながら歩いてもらうことにしたのです。 |
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◆CD『童男さんの歌/粉河祭だんじり太鼓』について |
『童男さんの歌』は、粉河の商店街の人たちから、このモニュメント設置を記念して「童男さんをテーマにした歌をつくってほしい」と依頼されつくった歌です。
歌のイントロで聴こえてくる太鼓の音は、粉河まつりのだんじりで競演される「粉河とんまか太鼓」の音です。
粉河車楽(しゃらく)ラブの河西弘文さんが実際に太鼓を叩いてくれた音を収録しています。
とんまか太鼓の中央打ちの音は「とん」、右へり打ちの音は「ま」、左へり打ちの音は「か」と聴こえます。続けて聴くと「とんまか」と聴こえるため、「とんまか太鼓」と言われるわけです。 |
粉河祭り |
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「ど ど どうなんさん」というサビの部分は、歌の依頼を受けたときに最初に思い浮かんだフレーズです。子ども達に楽しんで口ずさんでもらうには、こういった親しみやすいフレーズがいいのではと考えました。
宮沢賢治『風の又三郎』の一節「どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ・・・」のリズム感が好きだったので、少々参考にさせていただきました。 |
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粉河の駅前の童男さんからはじまって、とんまか通りのモニュメント、大門橋の端にある童男さんを紹介するだけでなく、粉河寺の童男堂(どうなんどう)にいる童男さんについても歌詞の中で紹介しています。
この童男堂の童男さんは、1年に1回、12月18日に開催される「童男会(どうなんえ)」という行事のときにしか拝見することができません。CDを聴いた人には、こういう年中行事にも関心をもってもらえればと考えています。 2番と3番の間に入れている「語り」の部分は、粉河で絵本の読み聞かせなどで活躍されている児玉君代さんにお願いしました。児玉さんの紀州弁の語りは、あたたかく素晴らしい仕上がりとなっています。
ひとつの歌の中に色々な要素を盛り込んでいて、少し欲張りな感じもしますが、要は、子ども達に楽しく歌っていただければいいのかなと考えています。
CDには、『童男さんの歌』のほか、『粉河祭だんじり太鼓』の鉦(かね)ありバージョンと鉦なしバージョンが収録されています。
河西弘文さんが一人で太鼓と鉦を演奏したものを、ASORA社がプロの技術で録音し編集しています。CDジャケットに「とんまか譜面」も掲載していますので、これから太鼓を練習しようとする方には参考になると思います。
CDジャケットの表紙は、粉河駅前の童男さんの像を囲んだ地元の女の子にモデルになってもらいました。ほのぼのとした仕上がりで親しみやすいものとなっています。
CD『童男さんの歌/粉河祭だんじり太鼓』は、粉河とうろう祭実行委員会が制作し、紀の川市商工会総会の記念品として配布されました。問い合わせは、紀の川市商工会(0736・73・5079)にお願いします。 |
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童男さんの物語
昔々、紀州の粉河の地に、孔子古(くしこ)という猟師が住んでいていました。ある日、鹿を狙っていると地面から光を発していたので、その地にお堂を建てて仏様を安置したいと考えました。
お堂は建てたものの、仏様がいなかったので困っていたところ、童(わらべ)の姿をした行者がやってきて、「私が仏様をつくって進ぜましょう。ただし、七日の間、けっしてのぞいてはいけません」と言って、お堂の中に入りました。
七日が過ぎて、孔子古がお堂の中に入ったところ、まばゆいばかり光につつまれた観音様が立っていました。
「あの童の行者は、観音様が姿をかえてやってきたに違いない」と孔子古は大喜びしました。それ以来、粉河の人たちは、童の行者を「童男さん」と呼んで、ありがたがったそうです。
童男さんは、人々を救うためにどこにでも現れました。河内の国の長者どんのところでは、娘が重い病にかかり苦しんでいましたが、ここにも童男さんが姿をあらわしました。童男さんが娘の枕もとで七日間祈り続けたところ、不思議なことに娘の病はすっかり治ってしまいました。
驚いた長者どんが、大喜びでお礼に宝物をいっぱいさしだしましたが、童男さんは受け取りません。娘の小刀と赤い布だけを受け取り、
「私は紀伊の国、粉河にいます。」
とだけ言って姿を消してしまいました。
次の年、長者どんは娘を連れて、紀伊の国に旅立ちました。山また山をこえ、山のふもとに粉を流したような白い川を見つけました。
「ここが粉河に違いない。」
と川をさかのぼっていくと、孔子古が建てたお堂にたどりつきました。お堂の中には観音様がいて、何と、童男さんにあげた小刀と赤い布が観音様の手に握られているではありませんか。
「ああ、やっぱり童男さんは観音様やったんや。」
と長者一家は、観音様に手をあわせたそうです。
その後も、長者一家は粉河に残り孔子古とともにお堂を守り続けたそうです。
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◆『門前町りばいばる』(紀の川市商店街活性化基本計画)
童男さんのモニュメントは、平成20年度、魅力ある商店街助成事業の採択を受け、約二千百万円の事業費をかけて制作されました。国100%の補助事業なので全国でこの事業を希望する団体が多く競争率が高い事業です。平成20年度は全国で13地区しか採択がありませんでした。この事業採択が決まったとき、「ほとんど奇跡的なことだ」と総務省にいる友人にびっくりされたことを覚えています。
この事業の申請のきっかけは、粉河の商店街の方々が「さびれていくまちをなんとかしたい」ということでした。しかし、極めて競争率の高い事業ですから、地元の意欲だけでは採択に至りません。市役所としても、申請内容に磨きをかけていくことが必要です。
この対応として商工観光課の職員の力を結集したのが『門前町りばいばる』という商店街活性化の基本計画です。この計画の出来不出来が採択を決める要となります。 |
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この計画の副題をご紹介しましょう。
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伝統ある歴史と現在の生活という二つの顔をもつ、粉河とんまか通り商店街。
商店街の活気がさびれていくことに歯止めをかけようと、すぐ近くにあるスーパー観光資源「粉河寺」との共存に、多くの人たちが知恵を絞る。特効薬はない。
築き上げたこのまちの文化は、室町時代から脈々と受け継がれてきたもの。時間をかけて、ゆっくりと、自分たちのこのまちを「再び愛そう」と立ち上がる。
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作成者のセンスを感じさせる文章と思いませんか?
この基本計画の策定に当たって、粉河とんまか通りの商店街の経営者の方々や、粉河寺への観光客などへもアンケートを実施して、現状分析をしっかりと行っています。
また、商工会会長や粉河寺管長、和歌山大学教授など、粉河商店街の活性化についてのキーマンへのインタビューを計画の中に織り込み、大変充実した内容となっています。
この職員手づくりながら大変充実した基本計画があったからこそ、難関だった助成事業の採択がなったものと考えています。
事業の採択後、商工会の呼びかけで粉河の商店街で実行委員会が結成され、「商店街の個性をどう伝えていくか」ということが改めて議論されました。
その結果、「童男さん」という粉河寺の草創の主人公を核として、粉河とんまか通りにモニュメントや童男さんの石像をたてることになったわけです。
この取組は、市民と市役所職員がともに力をあわせて町づくりを進める「協働」のモデルともなるべき事例ではないかと考えています。
なお、「門前町りばいばる」は、付属CDにPDFを添付しています。ぜひご覧ください。 |
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◆粉河とうろう祭について
粉河とんまか通りにモニュメントが完成したことを契機にはじめられたお祭です。粉河とんまか通りに数百本のとうろうを並べるとともに、コンサート等も行います。
平成21年からはじめられ、毎年九月の恒例行事となりつつあります。実は、商店街の30基のモニュメントは、とうろうとしても活用できるようになっています。まつり当日は、とんまか通りが幻想的な雰囲気につつまれます。
平成22年のとうろう祭では、「紀州わらべ歌粉河教室」の子ども達と一緒にコンサートに呼んでいただき、『童男さんの歌』を歌わせていただきました。
粉河のまちづくりと連動して、『童男さんの歌』は、楽しい歌に仕上がりました。この歌を支援していただいた紀の川市商工会や粉河商店街はじめ、関係者の皆さんに改めてお礼申し上げます。
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