大阪を離れて
(あんたの済州島(しま)へ)

作詞作曲/田中卓二 編曲/中山正直

1
あんたに会っていつしか3年が過ぎて 今日の日を迎えた
波の音の向こう側のふるさとのまちを 今離れてゆく
見送る父さんの大粒の涙 とめどなくあふれてくる
うちはほんまは不安やった ふるさとを離れるのは

そやけどあんたの済州島(しま)へゆく 心から好きやから

2
なんでこんな人のことを好きになったんやろか よく思うけれど
青い海のその向こうの済州(チェジュ)の港に あんた待ってるから
見送る母さんの白く細い手 いつまでも手を振った
うちはほんまは不安やった ふるさとを離れるのは

そやけどあんたの済州島(しま)へゆく 心から好きやから

3
あんたに出会えて うちはほんまに 幸せやと思っている
うちはほんまは不安やった ふるさとを離れるのは
そやけどあんたの済州島(しま)へゆく 心から好きやから

(ダンシンウルノム)   (サランハギエ)

(解説)

済州(チェジュ)島は、韓国南部にある人口約55万人の島です。
「韓国のハワイ」とも言われる風光明媚な国際的な観光地として知られ、城山日出峰(ソンサンイルチュルボン)や漢拏(ハルラ)山が世界遺産として登録されたことでも有名です。

和歌山との関係も深く、北部の済州(チェジュ)市が和歌山市と、南部の西帰浦(ソギポ)市が紀の川市と姉妹都市提携をしています。

紀の川市と西帰浦市の姉妹都市提携は、那賀郡と南済州郡が昭和49年度から行ってきた「みかん交流」の流れをくんでいます。那賀郡から南済州郡にみかんの苗木が贈られ相互訪問も行われてきました。
平成17年11月に那賀郡五町が合併して紀の川市が誕生し、平成18年7月に南済州郡と西帰浦市が合併して新しい西帰浦市が誕生しました。
これを契機に、平成19年2月、今まで那賀郡と南済州郡が築いてきた友好関係を保ちながら更に交流を深め発展させていくため、紀の川市と西帰浦市が姉妹都市を締結したものです。

  私も、平成20年5月、中村愼司市長と一緒に西帰浦市を訪問させていただきました。道路など基盤整備も進んでおり、国際観光都市の名に恥じない清潔な街並みに感激したのを覚えています。
西帰浦市庁舎のデスクに紙の書類がほとんどないことも驚きでした。
聞けば、韓国政府の方針で決裁等の手続きはすべてコンピュータで行うことになり、そのため、紙は基本的に使わなくなったそうです。
また、日本の県に該当する済州特別自治道には、外交と防衛以外は思い切って自治権を与えるなど地方分権についても、先進的な取組をしています。 日本から済州島にみかんを贈った「みかん交流」から30年ほどを経て、西帰浦市のまちづくりから紀の川市が学ぶべきことも多いのではと率直に感じました。
紀の川市と西帰浦市は、姉妹都市の締結以来、相互の職員の派遣交流や中学生の交流事業などを進めていて、両市の交流は、深まりをみせています。

『あんたの済州島{しま}へ』は、紀の川市と西帰浦市の交流を記念してつくった歌です。ふるさとを離れて済州島に嫁ぐ女性の物語を創作し、その想いを歌にしました。
生まれ育ったふるさとを離れるのは、誰しも不安で切ないものです。けれども、それを乗り越えてゆけるのは、真摯な「愛」の力ではないでしょうか。
この歌によって、紀の川市と西帰浦市との友好交流に貢献できれば幸いです。

◆CD『あんたの済州島(しま)へ』

CD『あんたの済州島(しま)へ』は、この歌と紀の川市内在住の歌手・宮本静(しず)さんとの出会いからはじまりました。「仲人」をしていただいたのは、ミュージックマート・エンタテイメントの岩橋和廣さんです。

 


岩橋さんは、和歌山市内で岩喜演歌商店を営むかたわらインターネット放送局も主催されている方です。私が岩橋さんの番組に出演したのがきっかけで親交を深めてきました。
岩橋さんは、宮本さんが歌手としてオリジナル曲を探しているのを知り、私の歌を歌ってみればと勧めてくれたそうです。

CDを企画する中で、『あんたの済州島へ』のハングルバージョンも作成することになり、韓国語訳を西帰浦市から派遣交流で来ていた姜(ガン)昌龍(チャンヨン)さんにお願いしました。
宮本さんは、姜さんから直接発音指導を受けてレコーディングにのぞみました。後に宮本さんのハングルバージョンを聴いた西帰浦市の人が、きれいな発音にびっくりしたそうです。
また、宮本さんの歌っている動画のURLを姜さんにEメールで送ったところ、「大変感動しました」という返信を頂きました。西帰浦市役所でも、その動画を回覧して見てもらったそうです。
CDには『紀の川のほとりで』もカップリングで入れることにしました。子ども達が歌うバージョンとは一味違う叙情あふれる宮本さんの『紀の川のほとりで』を聴くことができます。

宮本さんは、NHKBS勝ち抜き歌謡選手権で優勝するなど多数の歌謡賞を受賞されてきた実力派です。歌手になるのが夢だったのですが、結婚を機に夢をいったん封印していました。しかし、子育てが一段落し、『あんたの済州島へ』との出会いによって、CDデビューすることができました。
また、宮本さんは、近い将来、済州島でコンサートをするのが夢ということです。その夢は、きっとかなうのではないでしょうか。
CD『あんたの済州島へ』についての問い合わせは、ミュージックマート・エンタテインメント(073・457・1011)にお願いします。
なお、紀の川市の宣伝にもなることから、CD『あんたの済州島へ』について、私は印税等をいただいていませんので念のため。

この歌の原曲は、平成7年につくった『大阪を離れて』という歌です。大阪出身の女性を奥さんに迎える奄美大島出身の友人への餞(はなむけ)としてつくったものです。15年の時を経て、舞台を奄美から済州島にかえて、宮本さんに「魂」を吹き込んでいただき、本当にありがたいことと考えています。

このCDには、原曲の『大阪を離れて』を入れさせていただいています。CD『あんたの済州島へ』とあわせてお楽しみいただければ幸いです。